株式会社東芝さまに取材させていただきました!
- Dxstudent(s)
- 5月17日
- 読了時間: 7分
更新日:5月20日

株式会社東芝は、日本を代表する総合電機メーカーであり、エネルギーやインフラ、デジタルソリューションなど多岐にわたる分野で製品・サービスを展開しています。
モノづくりの技術とデジタルを融合させ、カーボンニュートラルの実現やレジリエントなインフラづくりを目指しています。
今回取材させていただいた経緯
現在開催中の万博の「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマを見た際に「東芝未来科学館」が頭に浮かびました。私は川崎に住んでいることもあり、身近な企業でしたが、実は何をしている会社なのか詳しくは知りませんでした。そのため、「人と、地球の、明日のために。」という企業理念のもと、どのようなDXの取り組みをしているのか興味を持ち、取材をさせていただきました。
今回お話を伺ったのは、DX・デザイン&コミュニケーション部CPS戦略室の別府さんと清水さんです。
東芝の目指すDXとは
私たちの身の周りにあるSNSのポップアップ広告など、興味関心に応じた情報が自動的に届けられる仕組みが広がっています。こうしたサイバー空間のデータを活用してビジネスを展開しているのが、GoogleやAppleなどに代表されるGAFAMなのですが、実は彼らが扱っているのは世界のデータのうちわずかです。残りの多くのデータは、鉄道や下水道システム、工場、エネルギー設備など、私たちの生活を支えるインフラの中に眠っています。東芝は、こうした物理空間(フィジカル)のデータを、サイバー空間に取り込み活用する「サイバーフィジカルシステム(CPS)」の構築を目指しています。工場やエネルギー、デバイスなど東芝が強みを持つ領域のデータを融合させることで、GAFAM以上の価値を生み出せるのではないかと考えています。
Q.社員の意識改革において、苦労した点はありますか。
A.モノづくりに従事している方々を巻き込んでいくのに苦労しました。
大事なことは、自分事として捉える事です。
その中で、生成AIは良い一歩になっていると感じます。まず「とにかく使ってみる」ことができる点が非常に大きく、意識改革への良いきっかけになっています。
Q.DX人材に期待する人物像はなんですか。
A.東芝では「全員がDX人材になる」という方針としているので、プログラミングなどの技術力だけでなく、「これまでのやり方を変えたい」というマインドも重視しています。その一環として、社員全員が自身のスキルや役割を登録する「DX人材スキル登録」を実施しています。また、それを支援するために自分のスキルを客観的に把握できる“ロール診断“ツールを作成しました。
Q.社員のDXスキルの可視化はどのように行なっていますか、また取り組みやすくするために工夫していることはありますか。
A.東芝では、12のロール(役割)を設定し、登録してもらっています。
これらの情報をもとに、部門ごとに「この事業部にはこのロールの人材がどれくらいいるのか」といった分布を可視化しています。この仕組みにより、自分がどの役割に向いているかを考えることで、キャリア形成のヒントにもなります。
将来的にはこのスキル情報を活用し、最適な人材配置にもつなげていきたいと考えています。登録者数は昨年度2万5千人、今年3月時点では3万5千人と、従業員の半数ほどに広がっています。

東芝グループのDX人材定義12のロール
Q.「みんなのDX」に関して効果を実感する瞬間はありますか。
A社員と一緒に取り組んできたアイデアが事業化されたときです。
Q.「みんなのDX」における社内ピッチ大会で提案されたアイデアはどのような基準や優先順位で実現に向けて進められていますか。
A.主に、「顧客の課題を正しく理解しているか」「東芝グループの理念“人と、地球の、明日のために。“と一致しているか」などの観点で評価を行い、優先順位を決めています。
Q.DX推進による社員に対しての意識調査などのアンケートは実施したことはありますか。
A.あります。96%の社員が「東芝の成長戦略にDXが必要である」と答えてくれています。ただ、実際に取り組んでいる人は39%となっています。やはり、実際に取り組みに移せていないケースも多いため、生成AIなど、まず一歩を踏み出せるきっかけづくりが今後必要になってくると考えています。
Q.他企業と連携する際、パートナー企業の選定基準や重視しているポイントは何ですか。
A.特にスタートアップ企業と連携する場合、まず信頼できる相手かどうかを慎重に見極めています。
また、技術力がまだ十分でなくても、熱意ある“人“がいれば最終的には成功するケースも多いため、人物は重視しています。
また、現在は当社の技術を使ってもらうような“提供型“の連携が多いのですが、今後は東芝の技術の中に他社の技術を取り組む“組込み型“へと移行したいと考えています。単なる技術提供だけでなく、プラットフォーマーとしてのポジションの確立を目指していきたいと考えています。
最後に「Good question!」とお褒めに預かった質問です。
Q.DE、DX、QXというステップを掲げていますが、実際の業務でどう実感されていますか。
A.「何がDEなの?」「何がDXなの?」という質問がよく出てきます。DEとは今の業務をデジタル化することなので分かりやすいのですが、DXをイメージしてもらう例として、気象データサービスがあります。
従来は、東芝は気象レーダシステムを国土交通省や気象庁、地方自治体、さらには鉄道や電力などの社会インフラ事業者などに提供する方式でしたが、逆に国土交通省が運営する気象レーダ生データの提供を受けて東芝が独自で解析し予測するという新しいソリューションの展開を開始しました。
従来と違うのは、数時間から数日という長期の予測ではなく、数十分という短時間でより正確に予測しているということです。例えば、ひょう予測などでは車の被害が多く保険会社に請求される保険金額が数百億に達する場合もあるのですが、この事業によって少しでもそれを減らせれば保険会社にとっては大きな利益になります。
こういったものを、実感を持てていない方に周知していきたいと考えています。

東芝が描くデジタルエコノミー発展の構図
Q. QXとは何ですか。
A.QXとはQuantum Transformationの略語で、量子技術により新たな価値を創造することです。量子技術が普及すれば、現在のコンピューターの仕組みは根本から変わり、従来の技術は通用しなくなると言われています。特に量子コンピューターが登場すると、処理速度は現在のパソコンとは比べものにならないほど高速になります。東芝は、そうした未来の量子社会においてもリーダーシップを発揮できる技術力を有しています。
インタビューを終えて…
取材に先立ち「DX化」に関するセミナーを受講しましたが、専門用語が多く内容も難しく感じ、むしろ混乱してしまいました。ところが、実際の取材では、具体例を交えてわかりやすく説明していただいたおかげで、DXへの理解が一気に深まりました。
特に印象的だったのが「ロール診断」という取り組みです。私たち学生の間でも流行っているMBTI診断のような形式で、かわいいイラストまでついていて、メンバー全員で盛り上がりました。楽しくDXに関われる仕組みがあることはとても魅力的で、「社員みんながDX人材である」という目標に向けた工夫だと感じました。また、社内ピッチ大会「みんなのDX」では、ファーストペンギンをモチーフにしたペンギンのイラストが使われていて、「飛び込む勇気」という例えが心に残りました。その話の中で、「全員がファーストペンギンでなくてもいい。まず飛び込んだ人について行くことから始めよう。」という言葉には深く納得し、挑戦する人を支える空気があるのは、すごく素敵なことだと思います。
取材の中では、初めてQXという言葉も知りました。DXのさらに先を見据えた考え方で、20年後には今と全く違う人材が求められるようになるという話を聞いて、まだ想像もできない未来に向けてもう動き出している東芝の姿に企業としての大きさと本気度を実感しました。
DXは、いまや社会で不可欠なものとなってきています。ですが、将来を担っていく高校生でDXを理解している人はまだ少ないのが現実です。だからこそ、この記事が「その知るきっかけ」になれば嬉しいです。
これからも多くの学生に知ってもらうため情報を発信していくとともに、私たちもより理解を深め、ファーストペンギンとなれるよう努力していきたいです。
株式会社東芝さま、取材させていただきましてありがとうございました!
取材日:2025年4月18日
記事作成者:福居実珠(代表)
同行者:賀屋菜々美(副代表)、戸田かれん(広報)、橋本芽生(渉外)