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川崎重工業株式会社さまに取材させていただきました!

  • 執筆者の写真: Dxstudent(s)
    Dxstudent(s)
  • 7 時間前
  • 読了時間: 8分

川崎重工業は、日本三大重工業の一つとして、100年以上にわたりモノづくりに携わってきた総合重工業メーカーです。船舶、鉄道車両、航空機、モーターサイクル、ガスタービン、ガスエンジン、産業プラント、油圧機器、ロボットなど、多岐にわたる製品を手がけ、その技術は宇宙から深海にまで及びます。「つぎの社会へ、信頼のこたえを ~Trustworthy Solutions for the Future~」というグループビジョンを掲げ、2030年に向けて、より持続可能で安心できる社会を目指しています。

 

【明石工場】

今回取材させて頂いた兵庫県の明石工場は、川崎重工の主力工場の一つです。ここでは、モーターサイクル、ガスタービン、ロボットなど、幅広い製品を手がけており、「スピード」そして「元気で明るく」をモットーに、日々ものづくりに取り組んでいます。

 

今回取材させていただいた経緯

父の影響でバイクなど重工分野に興味を持っていたことに加え、大阪万博でも注目されている企業であり、あまり身近に感じにくい製品群を手がけているからこそ、どのようなDXへの取り組みが行われているのか関心があったからです。

 

今回お話を伺ったのは、DX戦略本部の岡内さんと細川さんです。


Q.2030年を見据える中で、今のDXの取り組みがどのように“将来の川崎重工業”に繋がっていくと感じていますか。

A. これからの社会は、さまざまなものがデータという切り口で繋がっていくと考えています。その中で、DXは必要不可欠な存在です。川崎重工は、まずはロボットから、デジタルによる社会の変化を捉え、それを新たな事業形態へと繋げていくことを目指しています。


Q.多様な製品開発を行う中で、DXの共通基盤をどう設計していますか。

A.当社は、工場ごとに設計対象や部品のサイズ、生産プロセスが大きく異なります。そのため、すべてを一律に統一するのではなく、“皆で使える共通インフラ“をどう整理するかという観点で、基盤の設計に取り組んでいます。

具体的には、設計や製造に関しては各現場の最適化を尊重しつつ、コミュニケーションや会計システムなど、共通化のメリットが大きい部分に限定して統合を進めています。もともと各事業が独立性の高い運営を行なってきた背景もあり、「共通化できるもの」と「すべきでないもの」を慎重に見極めながら、無理のない形で基盤づくりを推進しているところです。

 

Q.産業ロボットで培ったリアルタイム制御やデータ活用の知見は、他の重工領域にどのように展開されていますか。

A.将来的には、他社工場で使われているロボットの稼働データと、実際に使われる部品や製品の情報をつなげ、設計から組み立て、出荷までを一貫してデジタルで最適化できるようにすることが理想です。いわば“縦のつながり”をデジタルで可視化・活用することで、新たな価値を生み出したいと考えています。

 

Q.事業横断的な技術の行き来という点では、どのような事例がありますか。

A.特に機械設計の分野では、分野をまたいだ連携が現場レベルで進んでいます。たとえば、バイクの空力設計に航空機の技術者が関わったり、ジェットエンジンのエンジニアが他のエンジン設計に携わったりするなど、事業を超えた技術交流が実際に行われています。

一方で、デジタル領域では、重工メーカーとしての背景もあり、IT人材の層がまだ十分とは言えず、そこが今後の課題でもあります。


Q.川崎重工業には“技術者の誇り”が根付いている企業文化の中で、DXを推進する際にどのような課題がありましたか。

A.最大の課題は、優秀な技術者に属人化されたノウハウを、いかに次の世代へ継承していくかという点です。

背景には、当社がかつて「人の川崎」と呼ばれたように、長年にわたって“個人の力”を重視する文化があったことがあります。現在の体制でもその気風は一定程度残っており、トップダウンで個人に直接指示が飛ぶような場面もあります。そのため、技術者一人ひとりのプライドや自負が強く、「人に教えない」といった傾向が根強く残りやすいです。

 

Q.そのような課題に対して、どのような工夫で現場の効率化やノウハウの継承を進めているのでしょうか。

A.現在は、設計プロセスの中でマニュアル化や情報の可視化に力を入れています。たとえば、CADデータや解析シミュレーションの履歴をしっかりと残し、「何をどう考えて、どう設計したか」という判断のプロセスを記録に残すようにしています。こうした“技術の足跡”を見える形にすることで、ノウハウとして蓄積しやすくなります。

とはいえ、経験に基づいた直感的な判断や職人技のような“頭の中の技術”を言語化・形式化するのは非常に難しく、そこは今も苦労している点です。

 

Q. 製品の安全性・信頼性を確保するために、どのような品質管理体制をとっていますか。

A.航空機であればFAA(米連邦航空局)の規定をはじめ、各業界には厳格な品質管理ルールが定められています。当社もそれに則って製品を開発・製造を行っており、“慎重さ”に相当する品質管理の部分については従来通り確実に実施し、安全性を常に確保しています。

 

Q. デジタル技術の導入によって、モノづくりの慎重さと速さのギャップをどのように調整していますか。

A.すべての業務を一律にデジタル化するのではなく、“合理化すべきところ”と“慎重さを維持すべきところ”を使い分けています。部品の運搬や手書きの指示書作成など、“価値を生まない作業”については、デジタル技術を活用して合理化・効率化を図っています。製造業全般で行われている「生産性改善活動」と同様に、当社でも本質的な価値創造に直結しない業務を見直しながら、慎重さとスピードのバランスをとっています。


Q.“ものづくりの現場力”と“DXによるデジタル技術”の融合で、将来的にどのような価値やサービスが生まれると考えていますか。

A.社長がよく口にするのは、「お客さんの欲しいものは発電機ではなく、電気でしょ」という言葉です。つまり、単に機器を納品するのではなく、その装置が安定的に稼働し、継続的に価値を生み出し続けるところまでが、当社が提供すべきサービスであり、それこそが次のステップとなる新しい事業の形だということです。

さらに将来的には、一つの製品だけでなく、さまざまな製品が相互につながり合うことで、スマートシティのように、都市そのものが快適で持続可能な環境となる未来を目指していきたいと考えています。

 

Q.128年の歴史の中で蓄積されたノウハウについて、どのように継承すべきだと考えていますか。

A.昔からあるノウハウの中で、今でも本当に役に立つものは、実はそれほど多くはないと感じています。だからこそ、全てをただ継承するのではなく、しっかりと取捨選択していくことが必要です。事業が常に進化していく中で、最新の方法が最善であるべきで、過去のやり方に先祖返りする必要はないと考えています。

 

Q.一方で、過去のノウハウをDXで活用する場面もあると思いますが、どのような点に意義を感じていますか。

A.一番の意義は、当時の設計思想が読み取れることだと思います。たとえば製品を30年、50年ぶりに更新しようとしたとき、残っているのは手書きの茶色くなった図面だけ、というケースも少なくありません。「なぜこの設計にしたのか」「なぜこの形状になったのか」といった背景は、そうした紙の記録にしか残っていないケースが多いです。

それに加えて、客先特有の事情や、据え付け先の現場環境なども含めて、私たちはそれらすべてを“ノウハウ”と捉えています。そうした情報をDXによって再整理し、次につなげていけるのは大きな価値だと感じています。ただ一方で、その膨大なノウハウをどう整理し、どう活用していくかは、今まさに向き合っている課題でもあります。


Q.川崎重工業ならではの強みは何ですか。

A.当社の製品群の特徴として、インフラやエネルギー機器の割合が比較的少なく、モーターサイクルや汎用ロボットなど、小型で世界中どこでも使ってもらえる製品が多いことが挙げられます。

また、さまざまな事業をまたいで幅広く活動を行っているため、異なる領域の知見を活かしながら、他の領域にも参入しやすいという点も特長です。こうした事業の広がりが、新しいビジネスの種を生みやすくしているともいえます。

そしてそこに、DXやデジタル技術などを活用する機会も増えていくことで、従来の製造業の枠にとどまらず、デジタルを通じて新たな価値を創出する取り組みを積極的に進めていける土壌があるのも、当社の強みではないかと思います。

 


取材を終えて…

今回は一人での取材ということもあり、少し不安もありました。ですが、取材にあたり、岡内さんと細川さんが、工場見学とランチミーティングを企画してくださったおかげで、リラックスして取材に臨めました。

見学の際に感じたのは、川崎重工の技術力の高さです。普段見ることのない大型エンジンやバイク、バギーが並ぶ展示には圧倒されました。今年の万博で見た四足歩行ロボット「CORLEO」も印象的でしたが、現地で製品や歴史に触れ、企業としての厚みをより実感しました。また、敷地内にまっすぐ伸びる道路が、かつて滑走路として使われていた名残であり、現在もバイクの試走行などに利用されているという話には驚きました。

取材の中で特に印象深かったのは、すべてを一律にデジタル化するのではなく、必要に応じて使い分けるというお話です。これまで私は、DXはとにかく進めるものだと考えていましたが、その考えが一面的だったことに気づかされました。DXは目的ではなく手段であり、現場に即した形で導入してこそ意味があるのだと学びました。

今後、スマートシティが本格的に実現すれば、社会のあらゆる場所でDXが当たり前の存在になると思います。今回の取材を通して、自分もそんな未来に貢献できる人材になりたいという思いが、より一層強くなりました。これからもDXについての学びを深め、他の高校生にも発信し続けていきたいです。





川崎重工業株式会社さま、取材させていただきましてありがとうございました!


取材日:2025年5月26日

記事作成者:福居実珠(代表)

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 

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