QUEST という探求学習で富士通さまの企業研究を行なった際に、DX 事業について興味を持ち、取材を行いました。
富士通株式会社は、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」をパーパスとして掲げており、テクノロジーで人々を幸せにする企業を目指しています。
そんな富士通さまに、DX プロジェクト「フジトラ」と「神山まるごと高専」について取材させて頂きました!
○「フジトラ」とは
「Fujitsu Tranceformation」の略で、時田社長が掲げた「IT 企業から DX 企業へ」という方針のもと、製品やサービス、ビジネスモデルに加えて、業務プロセスや組織、企業文化・風土を変革する、富士通の全社DXプロジェクトとして、2020 年に発足しました。フジトラは、「経営のリーダーシップ」「現場が主役全員参加」「カルチャー変革」の3つをポイントとして推進しています。
○「神山まるごと高専」とは
2023 年 4 月に徳島県名西郡神山町に設立された高等専門学校で、「モノをつくる力で、コトを起こす人」を育成することを目指しています。
この学校では、スカラーシップパートナーとして富士通を含む 11 社が 10 億円ずつ出資しており、希望すれば誰でも無償で奨学金を受けることが可能です。
また、先進的な取り組みや制度も充実しており、非常に人気が高く、入学を希望する学生が大勢います。
今回お話を伺ったのは、オフィス説明をしてくださった片野さん、フジトラについてご説明してくださった福村さん、神山まるごと高専のご説明をして下さった濱上さん、社内インターン制度に参加されていた本田さんです。
以下は対話の要点を Q&A の形で筆者がまとめています
Q. DX に取り組もうと思ったきっかけは何ですか
A.まず土台として制度とか企業風土を変え、ひとりひとりが今までのやり方から変えていく。そうしないと事業変革もできないし、パーパスにもたどり着けない。そういった思いからフジトラが生まれました。
Q.フジトラをはじめるにあたってどのような意見がありましたか
A.新しいことを始める時は誰しも戸惑いがあったり、仕事が手一杯で時間がなかったりで、新しいことなんかできないというような意見もやはり多く出ました。
そこで、考え方を変えてもらう事にしました。
ここで使うのがタイヤ交換の例なのですが、「皆さん(富士通社員)ってこの四角いタイヤを一生懸命今押していませんか?これだと一生懸命頑張っても忙しい状態ですよね」と、そこで「手間はかかるけど、丸いタイヤにすればもっと楽に仕事ができますよね。」というのが私たちの目指しているところです。
Q.社内の DX を推進する上で認識や理解はどうでしたか
A.DXって何をすればいいのか?など人それぞれ DX のイメージは違うので、日々、試行錯誤を重ねながら、経産省の出している指標も参考にして少しずつ認識を合わせています。
Q.DXを推進する上で一番大事にされていることは何ですか
A.フジトラでは、「経営と現場が一体」となり、全社・全員で取り組むということを大切にしています。デジタルの手段を使って競争上の優位性を確立するというのが、目的ですが、デジタルの活用はあくまで手段であり、時代に合わせた変革を目的としています。
Q.「フジトラ 10」という取り組みについても教えてください
→「現場が主役全員参加」を実現するための仕組みとして、誰でもフジトラの活動に業務時間の10%まで参加できるフジトラ 10 という仕組みを作りました。富士通ではプロジェクトや作業内容毎に工数管理しながら働く社員も多く、自部門や自身の本業以外の業務に参加するにはハードルがありましたが、この仕組みは、本当は自分も関わりたいと思っていても中々活動に参加することが出来ないということがないようにするため取り入れました。それで手を上げてくれた人たちをフジトラクルーと呼び、今では 650 人を超えたメンバーがいます。
Q.社内のDXを推進する取り組みのひとつとして、社内インターン制度があるということですが、どのように行われていますか
A.通常の企業インターン制度といえば、学生が職場体験をすることを言いますが、社内インターン制度とは、約半年間異なる部署で働くことが出来る制度です。
普段関わりのない色んな立場の人や異なる職種同士が制度を通して交流・対話することで、新しいスキルの習得や、お互いの理解を向上することができます。
Q.社内のDXの進捗において、社員の方の浸透度合いはどのように図っていますか。
A.半年に一度「Fujitsu Transformation Survey」というアンケートを実施し、「あなたの会社、組織は変わっていると思いますか?」という質問を通じて、定点観測する事で今の現場を確認しています。また、生成 AI でこのアンケートのコメントを分析することで傾向を把握し、次の施策を考える材料としています。
Q.この取り組みを展開していく上で大変だったことはありますか
A.数千人規模の組織に対して、全員に伝えることや、組織内で意見が合わないことが大変でした。なので、自分たちがやっていることの重要性や必要性を理解してもらえるよう努めています。
Q.社内での見える化の浸透度合いを教えてください
A.アンケートの回答内容でみると、変革を実感している社員は当初より増えてきているものの、まだ伸びしろがあるという印象です。
この変革に対してポジティブな人もネガティブな人も取り組む「時間」がキーワードでしたが、コロナ禍をきっかけに取り組もうとする人が増えました。
Q.DX の取り組みはコロナ禍の影響も大きいということですか?
A.そうです。コロナ禍では世の中がテレワークや、オンラインなどの働き方を余技なくされましたが、DX化を推進するうえで、その環境においても生産効率やコミュニケーションの質などを落とさないようにするために加速したと思います。
ここからは神山まるごと高専について質問させてください。
Q.具体的にどのような活動を行なっていますか
A.皆さんよくご存知の「うんこドリル」を富士通も作っています。
「Fujitsu × うんこドリル AI との付き合い方」というもので、その中の 1 ページを神山高専の学生達と作りました。
他にも、町営バスの廃止にあたり神山町の負担になっていたタクシーの補助金を、トリップデータを分析することによって 85%削減できました。
Q.神山まるごと高専の学生の特徴を教えてください
A.学校内には 16 歳から 20 歳までの人が一緒に活動するため、互いに刺激を与えあっています。そのため、キャリア意識の高い学生も多いです。
Q.活動内で印象的だった学生からの言葉などはありますか
A.一年生が富士通の魅力を伝えるプレゼンを行なった際に「生き方を選べる会社」と表現してくれたことが印象的でした。
Q.神山まるごと高専の授業はどのようなものですか
A.一般的な学校とほぼ同じように社会などの授業もあります。ですが、起業家精神を学ぶ学校でもあるので、 体育のサッカーの授業ではウェアラブルウォッチをつけて心拍数を測定したり、新しいルールのスポーツ競技を考えたりしているようです。
取材を終えて
富士通さまは私自身が初めてアポイントを取って取材に応じて頂けた企業のため、緊張もありましたが、当日温かく出迎えて頂き安心しました。オフィスも見学させて頂きましたが、開放的な空間に自由に選べる席は、スクリーンで空き情報も確認できるというとても便利なシステムで印象的でした。
今回の取材を通じ、富士通さまがどのように DX に取り組んでいるかを詳しく知ることができ、私たちの団体にとっても成長できる機会になりました。 DX を掲げるのは簡単ですが、実際に実行に移すのが大変です。私たちの団体も、学年や学校が違う仲間が集まり、企業様に取材した内容をどのようにすれば多くの学生に見てもらえるのかは現在試行錯誤中です。そのような DX の難しさを感じる中、対話を大切にする(社内インターン制度)取り組みを知り、改めて対話の大切さに気付かされました。また、神山まるごと高専に関しても、一般の学校では企業と直接話す機会が少ない中、放課後などに積極的に交流の場が設けられていることは大きな魅力だと感じました。
今後も今回学んだことを活かし、企業が DX にどのような変革をもたらすのかを、同世代の学生達にも発信していきたいです。
富士通株式会社さま、取材をさせて頂きましてありがとうございました!